埼玉県蓮田市立平野小学校でプログラミング教育研修

昨日は埼玉県蓮田市立平野小学校で、先生向けにプログラミング教育の研修会を担当させていただきました。

平野小学校は今年、埼玉県で7校あるプログラミング教育推進校に指定されています。

今期から赴任されている茂見先生を中心に、プログラミング教育の学習活動の分類Aに取り組む計画です。

その一環として、まずは先生方にプログラミング教育を体験していただく、という趣旨で約2時間の研修を担当させていただきました。

この内容の研修はもう10回を超えているのではなかろうか。

それでもまだまだ先生方にとってプログラミング教育は未知なもの、という状態なのであと1年くらいは続くと思っています。いや、2年かな。

この研修では、プログラミング教育はこわくない!という印象をもってもらうことを一番重視しています。

そして、楽しんでもらいながら扱い方に慣れてもらい、「あの単元であんなことができそう」という発想につながればいいなと思っています。

楽しんでもらえそうな教材をもっていきました

私は埼玉出身でかつ埼玉大学教育学部卒でありながら、埼玉県の学校と関わる機会がないので、その意味でもうれしい機会でした。

茂見先生ありがとうございました!

ーーー

当社のSTEM教育スクールのSTEMONではそろそろ各校が秋の入会生を募集します。葉山にも新たに開校しますよ!

https://www.stemon.net

プログラミング必修化よりも革新的な新たな学習指導要領3つの変更点

こんにちは、ヴィリング代表の中村一彰です。

昨日、2017年3月に告示予定の新たな学習指導要領のパブリックコメントが受付開始となりました。

今回の改訂は「ゆとり教育」「週5日制」「絶対評価」がはじまった平成14年の改訂よりも大きな改革ではないかと思っています。

少しでも多くの方に興味を持ってもらいたいと思い、主に小学校課程の学習指導要領に対する私見を書きたいと思います。

▼学習指導要領(左)
文部科学省が発行する法的な拘束力を持ったもの。全教科6年分この1冊にまとまっています。
▼学習指導要領解説(右)
10年に1度の学習指導要領改訂にあわせて文部科学省がつくる教員向けの冊子。教科ごとに1年生~6年生で学ぶべき内容が記載されている。法的な拘束力はなしとされています。

 

2020年(平成32年)から実施される新しい学習指導要領で最も話題になっているのはプログラミング教育でしょう。

中央教育審議会の議論をさかのぼると、数年前はほぼ議論にあがっていなかったプログラミング教育が、情報社会に合わせて急ピッチで議論が進み、2020年から公立小学校でプログラミング教育必修化にこぎつけたことがわかります。

小学校でのプログラミング教育は、学校現場ではまだまだ現実味が乏しい状況で、先日お会いした先生の中には「新聞で知りました」という方や「えっ、知らなかった」という方もいらっしゃいました。

一方で、当社がプログラミングソフト「Scratch」の学習教材を提供させていただいている小金井市の前原小学校をはじめ、一部の学校では試験的な実践が盛んになってきています。

 

ステモン!(株式会社ヴィリング)が公立小学校に公開しているプログラミング学習教材

 

プログラミング教育と並んで外国語も必修化となります。

これは当面は”英語教育”と置きかえてよいと思いますが、この2つが公立小学校にて新しい学びとなることは時代を象徴する大きな変更点といえるでしょう。

しかしこの2つの影に隠れてしまっているけれども、実はもっと革新的な3つの改定が来月告示される学習指導要領では盛り込まれる見込みなのです。

自ら小学生向けプログラミング教育を運営していながらこのブログタイトルはためらいましたが、やはり今回の学習指導要領の本質的な改定はこの3つにあると考えています。

プログラミング教育よりももっと革新的な新しい学習指導要領3つの変更点

大きな変更点の1つ目は『評価項目が4つから3つに変わる』ということです。

現在学校における子供たちの評価項目は以下の4つです。

  • 「知識・理解」
  • 「思考・判断」
  • 「技能・表現」
  • 「関心・意欲・態度」

小学校のお子様がいるご家庭では見覚えのある項目かと思います。現行ではこの4つ項目で学習状況の評価が行われているのです。

これが以下の3つになる予定です。

  • 「知識及び技能」
  • 「思考力・判断力・表現力等」
  • 「主体的に学習に取り組む態度」

現行との関係性を図にすると以下のようになります。

 

「知識・理解」と「技能」が「知識及び技能」という1つの項目に集約される形となります。これらは「学校教育法第30条2項」にある子供たちが育むべき力を表した評価項目がもとになっています。

この改訂は「思考力・判断力・表現力」と「主体的に学ぶ態度」の重要性を高めたことを意味し、「知識があるだけにとどまらず、その知識を活用して創造や表現をすることの重要性」と、「生涯にわたって主体的かつ探究的に学び続けることの重要性」を示しているのです。

評価(学校の成績や受験システム)もこの2つの力がしっかりと育まれているのかを評価をする方向に変わっていくはずです。

”インプット”だけでなく”インプットをアプトプットにつなげる力が大事ですよ!”という意志が汲み取れ、これはとても良い改訂だと私は思います。

 

情報の蓄積と情報処理はコンピューターが人を圧倒的に勝ります。知識の獲得にとどまるならば、いわゆる”ググれカス”って言われないように検索すれば済む話です。

知識が豊富なだけではイキイキと活躍することができない社会になってしまったのです。

一方でコンピューターはある情報を有意に関連付けて新しい概念を生み出すことは苦手です。例えば「棒」と「棒」を組み合わせたら食事が便利な「箸」になることをコンピューターが生み出すことは難しい。

2つの「棒」が箸という新しい概念・道具になる。このような創造はコンピューターにはまだ難しい

ここに人の強みがあります。

これからの社会では知識を関連付けたり組み合わせて新しい概念を人が創造し、テクノロジーを活用して実現する力が大切な能力になるのです。

この評価項目の変更は社会の変化に沿った素晴らしいものだと思います。

大きな変更点の2つ目:はじめて学習指導要領が踏み込む先生たちの聖域

大きな変更点の2つ目は、これまで先生の聖域とされており学習指導要領が踏み込んだことのなかった領域に触れています。

それは『学び方』です。

戦後6回の学習指導要領改訂のなかで規定していたのは、

「何を学ぶか」「何時間学ぶか」の2つでした。

「何を学ぶか」を規定することで全国津々浦々同じ勉強ができ、世界でもトップレベルの教育水準を実現してきました。

また、「何時間学ぶか」を規定することで公教育としての公平性を保ってきました。

ただしどのように学ぶのかについてはほぼ触れていませんでした。

 

学習指導要領をどう解釈して、どのように教えるかは先生たちの工夫に任されていて、ここが先生たちの腕の見せ所です。先生方は教科ごとに定期的に部会や研究会を行い、その研究と実践が代々引き継がれてきました。

例えば算数の「小数の計算」について、それぞれが実践した授業案を持ち寄って事例共有を行うなどです。

先生方の真摯な積み重ねが、日本の教科教育を世界トップレベルを押し上げたと言えるでしょう。

(この職人的なスキルゆえに横断的に学ぶ弊害も出てきていると思いますが、それは別の機会に触れたいと思います)

では、新しい学習指導要領が「学び方」についてどのような方針を示しているのかというと、

「主体的・対話的で深い学び」

と表現しています。

これは、ここ数年注目されてきた「アクティブ・ラーニング」のことです。

アクティブ・ラーニングとは、教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れ た教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査 学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク 等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。引用:文部科学省 用語集 http://www.keinet.ne.jp/gl/10/11/kaikaku_1011.pdf

 

主体的・探究的に学ぶ(アクティブ・ラーニング)ステモン!のレッスン風景

 

 

アクティブラーニングという言葉は定義が曖昧ということで、学習指導要領では使用は見送られるようです。そして「主体的・対話的で深い学び」という表現になりました。

変化の早い現代社会では、”大学まで学び、社会に出たあとはその知識を活かして仕事をする”ということは不可能です。社会に出たあとも学び続ける必要があります。

しかも、社会に出たあとは誰も正解を持っていないことを学びながら自分なりに見出していく必要があるのです。

文科省はこの時代背景に沿って、子供たちが主体的に なぜ!? どうして!?と思ったことを探究的に学び、新しい発見をする喜びを感じることで、主体的に学び続ける態度を育んでいくべきと考え、そのように学校教育も舵を切ったのでしょう。

素晴らしい!!

当社でも2013年から取り組んでいる探究型学習スクールBOKENのねらいもまさにここにあります。
子供たちが新しい発見をする喜びをたくさん体験してもらうことや、協同で学ぶ仕掛けをつくってきました。学校でもこのような場が増えていくことはとても良い方向だと思います。

 

上記2つの変更点はいずれも素晴らしい方針だと思います。文部科学省の方々の深い知見と、考え抜いてつくられたであろう努力が一語一語から感じられ尊敬の念を抱きます。

しかし新たに懸念することも出てきます。それは・・・

「学校ができるのか?」ということです。

私は教育学部出身のため同級生の多くが学校の教員として勤めています。

彼らは多忙です。

教科を教えることは先生としての業務の一部にすぎず、生活指導や進路指導、保護者対応、そして部活動など仕事は多岐に渡ります。

また、急にこれまでと違うことをやらねばならないとなっても、スキルとして備わっていなければできません。

例えばプログラミングを教えることや英語を教えることは、知見がない先生には難しいでしょうし、既存の教科を「主体的・対話的に深い学び」の授業案にカスタマイズすることは簡単ではないはずです。

おそらくこのような背景から、新たな学習指導要領の3つ目の変更点があるのだと思います。

大きな変更点の3つ目:「社会に開かれた教育課程」という方針に基づく民間との連携

今までの学習指導要領にはなかった「前文」というものが新設される予定です。

これは改訂全体の方針を示すもので、”全てはこの方針・前提で取り組んでいこうよ”というメッセージです。

そこにあるのが、

学校と社会との連携・協働の中で教育目的実現を図る「社会に開かれた教育課程」

 

が強調されています。

これはつまり、社会の変化に合わせて最適な教育を子供たちに提供するには学校だけでは困難だと言い換えることができます。
そして我々のような民間企業やNPOなどが一部担い、社会全体で公教育をつくっていこうという方針です。

閉ざされた学校から脱却し民間と連携して新しい公教育の形をつくる

実際に当社が運営するステモン!という小学生向けSTEM教育スクールは、昨年度東京都多摩市の愛和小学校にてプログラミングの授業を3,4,5,6年生に15時間ずつ担当させて頂きました。

全60時間程度、ほぼすべて私が教壇に立たせていただき子供たちにプログラミングの授業を実施したのです。

 

愛和小学校にてプログラミング授業を実施する筆者
(愛和小学校2年半のICT活用発表会レポート写真より)

校長先生や担任の先生と連携して取り組みました。自分でいうのもおこがましいですが私たちがいなければ実現はできなかったと思います。

それは、教材の選定や授業案の作り方、学年に応じてどのような成果物を期待することが適切なのかを先生方はまだご存知でなかったからです。

このように、民間企業が持っている知見やリソースを公教育で活用していただく、これによって学校だけでは担いきれない学びを協働でつくっていくカルチャーが重要になるのでしょう。

以上が、新しい学習指導要領における革新的な3つの変更点となります。どれも時代にフィットした素晴らしい改訂だと思います。一方でこれらを学校ですぐに実践していくことは難しいでしょう。

多忙な先生方のご苦労が目に浮かびますが、社会は待ったなしで子供たちを待ち受けています。私も教育ベンチャーを経営する1人として貢献していきたいと考えています。

※文部科学省より公表された資料をもとに個人の解釈で書いております。詳しくは3月に告示される学習指導要領や文部科学省の公表資料をご確認ください。